政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「すみれがリクエストしないからだろ。俺に任せるなら、店も俺が選ぶよ」


つまり、彼にとっての〝手に取りやすいところ〟が優先されるということ。


ラグジュアリーブランドで買ってもらうなんて気が引ける。すみれは、慧がくれるものなら千円のプレゼントでもいいのに……。
しかし、彼に選んでほしい気持ちも大きい。


「……わかりました。じゃあ、慧さんにお任せします。でも、その……私がお返しできる範囲にしてください」
「俺はすみれに見返りなんて求めてない。夫婦なんだから、こういうときは夫に甘えておけばいいんだ」


困惑もあるが、『夫に甘えておけばいい』という言葉が嬉しい。今日だけは心も夫婦だと言われたような気がした。


「いらっしゃいませ」


車を止めた目の前の店舗に入ると、すぐさま男性スタッフが慧を見た。


「御門様……! いつもお世話になっております。本日はどういったものをお探しでしょうか?」
「妻の服と靴とバッグを見せてもらいたいんです。ふたりでゆっくり見るから、今日は傍についていただかなくて構いません」
「承知いたしました。なにかございましたら、いつでもお声がけくださいませ」


スタッフとのやり取りから、慧がこの店を贔屓にしているのがわかる。
御門家では行商を呼ぶことが多いと聞いているが、彼は店舗に足を運ぶ方が好きなのだろうか。それとも、すみれのためにこうして直接見に来たのだろうか。


どちらにしても、『ふたりでゆっくり見る』という言葉に胸が弾んだ。


「行こう」


慧がスタッフに会釈し、すみれに肘を差し出す。すみれはそこに手を添えるようにし、彼にエスコートされながら店内を歩いた。

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