政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「ああ、いいんじゃないか。暗すぎないし、派手すぎない。似合うよ」


あまりにも素直に褒められ、すみれの鼓動が高鳴る。
社交辞令、ただのよそゆきの顔……。そんな風に思いながらも、心は勝手に浮き立ってしまう。


「着心地はどうだ? 動きにくいとか、肌に合わない感じがするとか」
「大丈夫です。綺麗なのに動きやすいですし、生地も心地いいです」
「じゃあ、それは買おう」


頷いた慧が、「先にワンピースを全部着て」と告げる。すみれは「はい」と返事をし、再び着替えた。


そうして、ファッションショーのような試着が進んでいく。
ワンピースとトップスが三着ずつ、スカートが二着、そしてコートが四着。結局、コート一着と靴一足を除き、すべて購入することになった。


「さすがにこんなにたくさんは……」
「誕生日なんだから遠慮しなくていい。それに、女性は色々な服が必要だろ。男と違ってスーツで出掛けるわけにはいかない」


確かに、彼の言う事は一理ある。男性ならスーツで済ませられても、女性はそうはいかない場面が多い。


しかも、今後は慧の妻として人に会うことも増えていくだろう。もし同じ人に会うことになったとき、前回と同じ服を着るわけにはいかない。


「わかりました。じゃあ、ありがとうございます」


彼は微笑を浮かべ、サッと会計を済ませた。


複数のスタッフに丁重に見送られ、車に戻る。そのまま移動するのかと思ったら、慧はトランクに荷物を積んだだけだった。


「次はジュエリーも見繕おう。人と会うときにつけるものがいくつか欲しいな」
「まだ買うんですか?」
「ジュエリーは買ってないだろ」


目を真ん丸にして驚くすみれに、彼は当然のように言ってのける。


さすがのすみれも、いくつかのジュエリーは持っている。けれど、慧から見ると、もっとハイグレードのものが必要だ……ということなのだろう。


すみれは、気後れしつつも大人しくついていくしかなかった。

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