政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「もしかして、家事をしなくていいと言ったのも……」
「もちろん、そういう意味だが」


これまで、すみれは大きな勘違いをしていた。それがわかり、誤解が解けたことで、全身の力が抜けていくようだった。


「てっきり、慧さんは必要以上に家の中のものを触られたくないとか、私の手料理が嫌なのかと……。だから、料理だけじゃなくて家事もしなくていいと言われたのかと思ってました」
「そうだったのか」


慧が多くを語らない人なのは知っている。しかし、ここまで肝心なことを言ってくれないとは……。そう思う一方で、彼の思いやりに気づかされた。


心が軽くなったすみれは、改めて思う。出会った夜に見せてくれた優しさはやっぱり嘘ではなかったのだ……と。


「あっ、とにかく食べましょう。冷めちゃいますから」
「そうだな。いただきます」


両手を合わせた慧が、吸い物に箸をつける。次いで、肉じゃがや副菜も食べていき、しばらくしたあとで咳払いをした。


「……どれもうまい。すみれは料理が得意なんだな」


思いもよらない褒め言葉に、すみれは呆気に取られたようにポカンとしてしまう。


「よ、よかったです……」


嬉しいのにどう言えばいいのかわからず、小さくそう返すのが精いっぱいだった。
その後、彼は無言で箸を進め、綺麗に完食した。すみれも食べ進めたが、胸がいっぱいであまり食べられそうにない。


(ぎこちないし、全然夫婦らしくもないけど……。でも、慧さんとの距離が少しずつ近づいてるって思ってもいいのかな)


空っぽになった慧の食器を見て、すみれは自然と微笑んでいた――。

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