政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
三 誤解が生んだ初夜
二十時頃、美弥は笑顔で帰っていた。
夕食も振る舞い、彼女はほとんど平らげた。料理もパウンドケーキも喜んでくれたし、久しぶりにゆっくり過ごせたことも嬉しい。
いつも通り美弥の話もたくさん聞き、よく笑い、有意義な時間だったと思う。
しかし、心の片隅ではずっと夕方の件が気になっていた。
話に夢中だったせいか、玄関の音に気づけなかった。慧がいつ帰ってきたのかわからないが、少し前から廊下にいた可能性もある。
すみれは片付けとお風呂を済ませたが、どうしても心が落ち着かない。リビングのソファでため息をついたとき、玄関が開く音がした。
慌てて立ち上がり、リビングのドアを開ける。廊下に立っていた彼は、ドアに手を伸ばそうとしていたようだ。
「おかえりなさい」
声が上ずりそうになり、咄嗟に咳払いでごまかす。笑顔を見せたつもりだったが、上手く笑えた自信はなかった。
「……ああ」
慧の声がいつもよりも低い気がする。心なしか表情も硬く、視線が合わない。
やっぱり、話を聞かれていたのだろうか。確かめたいのに、言葉が出てきそうにないどころか、すみれも彼を見られなくなった。
ふたりでリビングに入ると、明らかに気まずさを孕んだ沈黙に包まれた。すぐさま空気が張りつめていく。
「……離婚したいのか?」
「っ……!」
程なくして、静かな部屋に冷たい声が響いた。
隠せなかった動揺が、すみれの顔に浮かぶ。すみれは咄嗟に顔を上げて慧を見たが、なにを言っても言い訳になるのは間違いない。
彼が小さく舌打ち、苛立ちを見せる。すみれがビクッとした直後、強引に腕を引かれた。
夕食も振る舞い、彼女はほとんど平らげた。料理もパウンドケーキも喜んでくれたし、久しぶりにゆっくり過ごせたことも嬉しい。
いつも通り美弥の話もたくさん聞き、よく笑い、有意義な時間だったと思う。
しかし、心の片隅ではずっと夕方の件が気になっていた。
話に夢中だったせいか、玄関の音に気づけなかった。慧がいつ帰ってきたのかわからないが、少し前から廊下にいた可能性もある。
すみれは片付けとお風呂を済ませたが、どうしても心が落ち着かない。リビングのソファでため息をついたとき、玄関が開く音がした。
慌てて立ち上がり、リビングのドアを開ける。廊下に立っていた彼は、ドアに手を伸ばそうとしていたようだ。
「おかえりなさい」
声が上ずりそうになり、咄嗟に咳払いでごまかす。笑顔を見せたつもりだったが、上手く笑えた自信はなかった。
「……ああ」
慧の声がいつもよりも低い気がする。心なしか表情も硬く、視線が合わない。
やっぱり、話を聞かれていたのだろうか。確かめたいのに、言葉が出てきそうにないどころか、すみれも彼を見られなくなった。
ふたりでリビングに入ると、明らかに気まずさを孕んだ沈黙に包まれた。すぐさま空気が張りつめていく。
「……離婚したいのか?」
「っ……!」
程なくして、静かな部屋に冷たい声が響いた。
隠せなかった動揺が、すみれの顔に浮かぶ。すみれは咄嗟に顔を上げて慧を見たが、なにを言っても言い訳になるのは間違いない。
彼が小さく舌打ち、苛立ちを見せる。すみれがビクッとした直後、強引に腕を引かれた。