政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「すみれ」


すると、慧が手を止め、ぴしゃりと厳しい声音で呼ばれる。こっちを見ろ、と言われていると察し、おずおずと顔を戻す。


「俺から目を逸らすな」


羞恥なんて、きっと言い訳にはならない。熱くなった頬を隠すことも許されない。
そう悟ったすみれは、従順に小さく頷いて見せた。


直後、彼の表情が和らいだ気がする。
けれど、それはあまりにも一瞬のこと。一秒後の彼の目からは、もう温度を感じられなかった。


(慧さんはきっと怒ってるんだ……。私が身勝手なことを言っちゃったから……)


慧とすみれの結婚は、すなわち御門と六条の結びつきである。そして、六条の方が明らかに立場が弱い。
援助がいくらだったのかは知らないが、六条にとっては命綱だったはず。


そこまでのことをしたのに、妻から『離婚』という言葉が出たなんて……。彼からすると、怒りを感じないわけがないだろう。


「すみれ、なにを考えてる」
「えっ?」
「今は俺だけを見ろ」


低い声音で落とされた命令に、愛はない。
それなのに、慧からの言葉だと思うとすみれの心は従順になる。彼の瞳に自分自身が映っていることが嬉しくて、今だけは自分を見てもらえるのだと思った。


再び慧の手が動き始め、下着の上からやんわりと胸を揉まれた。彼が力を込めると先端が布とこすれ、背筋のあたりがゾクゾクと粟立った。


柔らかくて手触りのいいルームウェアは、胸の上まで押し上げられている。ブラも今にもずれそうで、あと少しですべてが見えてしまいそうだった。


一方の慧は、慣れた様子ですみれの身体を暴こうとしてくる。
解けていた唇をまた奪っては、舌で口内をねっとりと嬲って。激しくも丁寧なキスで、すみれを翻弄してくる。


上顎から歯列へ、そのまま舌の裏まで撫で、余すことなくこすっていく。すみれの口腔にはふたりの唾液が溢れ、唇の端から雫が垂れた。

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