政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
(わかってる……。慧さんはただ後継ぎが欲しいだけ……。愛されてるなんて、勘違いしたりしない)


自分に言い聞かせるように心の中で呟いたが、鼓動は早鐘を打っていた。
すみれの心を置き去りにして、慧とひとつになっていく。ゆっくりと身体が重なると、じりじりと焼けるような痛みに包まれた。


「すみれ、ちゃんと息をして。ゆっくり深呼吸するんだ」


いつの間にか、すみれは息を止めて唇を噛みしめていた。
すぐに口を開くと身体が勝手に空気を吸い、肺に酸素が入り込んでくる。ハッハッと短い呼吸を繰り返し、どうにか息ができるようになった。


すみれの様子を見ていた彼が、ホッとしたように微笑む。心配されているのかと思える表情を前に、すみれは困惑してしまった。


慧は怒っていたはず。すみれの言葉で気分を害し、後継ぎ欲しさにこうして身体を重ねることになっただけ。


けれど、彼に大切にされているように感じてしまう。最初は強引だったのに、ずっと優しさと気遣いが見えていることにギャップを感じた。


「少しくらいは余裕が出てきたのか」
「えっ?」


ふと慧を見ると、彼はなにかをこらえるように眉根を寄せていた。心なしか、声も苦しそうだった気がする。


「余計なことを考えていただろ?」


果たして、これは余計なのだろうか。他でもない慧のことを考えるのは、必要のないことなのだろうか。
どう言えばわからずにいると、彼が息を短く吐いた。


「他のことを考えるくらいの余裕があるなら、そろそろ動いてもいいな?」


答える前に慧が腰を引き、すみれの呼吸が止まってしまう。すぐに息を吸ったが、間髪容れずに大きな質量が戻ってきた。

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