政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
『家は家、君は君だろう』
『えっ?』
『俺から見れば、君は可愛らしい女性だよ』
自分の人生で、『可愛らしい』なんて言葉を使った記憶はない。少なくとも、なにに対しても抱いたことがない感情だったのだから。
それなのに、深く考えることなく口にした。それが嘘でも社交辞令でもないことは、慧自身が一番わかっていた。
慰めたいとか、元気づけたいとか……。たぶんそんな理由はなかった。ただ、すみれの心からの笑顔が見たかった。
『君の隠れた呼び名は、高嶺の蕾だそうだ』
『知ってます。さっきの男性にも言われましたし……その前からも』
慧の話を意地悪だとでも受け取ったのだろうか。彼女の表情が急速に冷え、語尾が小さくなった。
『なにもそんな顔をする必要はないだろう』
しかし、真意があった慧は、間を置かずに続きを紡ぐ。
『どんな花でも、蕾の時期がある。つまり、蕾ならこれからどんな花でも咲かせられるということだ』
すみれの存在を肯定したかった。彼女の心に抱えているものを、ほんの少しでもいいから軽くしたかった。
おこがましいかもしれないが、確かにそんな庇護欲に似た気持ちがあったのだ。
『君なら、君だけの美しさを持った花を見せてくれそうだ』
だから、こんな言葉が出たのだろう。
お世辞も社交辞令も腐るほど吐いてきた。だが、それはいつだって仕事ためで、このときのように仕事とは関係がない相手の心に寄り添おうとしたことはなかったのだ。
すみれが、ふっと表情を和らげる。素直に零れた笑顔は、まるで美しさと愛らしさを兼ね備えた花のようだった。
(……この子が蕾だと?)
つまらない呼び名をつけたのは、いったい誰なのか。
蕾だと揶揄するように言っていた奴らは、きっと彼女の素の笑顔を知らないのだ。これまでの慧のように……。
けれど、慧は知ってしまった。すみれは蕾なんかではなく、誰にも知られていないたおやかな花なのだ……と。
急速に心が動き出す。このときには、もう心を掴まれていたのだろう。
欲しい、と思った。この笑顔を、彼女の色々な表情を、ずっと見ていたいと思った。
できることなら、この先ずっと守っていきたい……とまで考えた。
『えっ?』
『俺から見れば、君は可愛らしい女性だよ』
自分の人生で、『可愛らしい』なんて言葉を使った記憶はない。少なくとも、なにに対しても抱いたことがない感情だったのだから。
それなのに、深く考えることなく口にした。それが嘘でも社交辞令でもないことは、慧自身が一番わかっていた。
慰めたいとか、元気づけたいとか……。たぶんそんな理由はなかった。ただ、すみれの心からの笑顔が見たかった。
『君の隠れた呼び名は、高嶺の蕾だそうだ』
『知ってます。さっきの男性にも言われましたし……その前からも』
慧の話を意地悪だとでも受け取ったのだろうか。彼女の表情が急速に冷え、語尾が小さくなった。
『なにもそんな顔をする必要はないだろう』
しかし、真意があった慧は、間を置かずに続きを紡ぐ。
『どんな花でも、蕾の時期がある。つまり、蕾ならこれからどんな花でも咲かせられるということだ』
すみれの存在を肯定したかった。彼女の心に抱えているものを、ほんの少しでもいいから軽くしたかった。
おこがましいかもしれないが、確かにそんな庇護欲に似た気持ちがあったのだ。
『君なら、君だけの美しさを持った花を見せてくれそうだ』
だから、こんな言葉が出たのだろう。
お世辞も社交辞令も腐るほど吐いてきた。だが、それはいつだって仕事ためで、このときのように仕事とは関係がない相手の心に寄り添おうとしたことはなかったのだ。
すみれが、ふっと表情を和らげる。素直に零れた笑顔は、まるで美しさと愛らしさを兼ね備えた花のようだった。
(……この子が蕾だと?)
つまらない呼び名をつけたのは、いったい誰なのか。
蕾だと揶揄するように言っていた奴らは、きっと彼女の素の笑顔を知らないのだ。これまでの慧のように……。
けれど、慧は知ってしまった。すみれは蕾なんかではなく、誰にも知られていないたおやかな花なのだ……と。
急速に心が動き出す。このときには、もう心を掴まれていたのだろう。
欲しい、と思った。この笑顔を、彼女の色々な表情を、ずっと見ていたいと思った。
できることなら、この先ずっと守っていきたい……とまで考えた。