政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
六条は、もう何年も経営が悪化の一途を辿っている。今さら業績が回復するとは思えず、大きな融資を得たところで六条の手腕では無理だと感じるほどだった。


男の話を聞く限り、実家がそれなりに太い家を探しているようだけれど……。いずれにしても、この男の家程度では六条の条件を満たせないに違いない。
この二年、すみれのことを調べていた慧は、そう確信していた。


『まあ、いくら六条とはいえ、もう没落してますからね。御門さんほどの方には関係のない話ですよね』
『さあ、どうでしょうね。では、私はこれで』


慧は男たちに繕った笑みを向けて立ち去り、すぐさま六条との接触を謀ることにした。


といっても、すみれの父親が懇意にしている寿司屋に行っただけ。彼女のことを調べたときに父親の調査も依頼していたため、行きつけの店くらいは知っていた。


数日張っていれば、彼に会えた。あとはもう、気に入られればいいだけのこと。


カウンター席の中央にいた慧は、すぐに腰を上げた。


『こんばんは、六条社長。御門です。以前、一度だけパーティーでお話しさせていただいたことがあるのですが、覚えていらっしゃいますでしょうか?』
『え、ええ……! もちろんです。その節は色々とお話ししていただき、ありがとうございました。まさか、こんなところで御門さんにお会いできるとは……』


彼女の父親は動揺していたが、すぐさま笑みを浮かべた。彼が驚くのも無理はない。


すみれの父親と話したのは、奇しくもすみれと出会ったパーティーのときだった。彼女に助け船を出す少し前、挨拶をされたのだ。


あのときは適当に躱し、当たり障りのない会話をして立ち去った。そんな相手が話しかけてきたのだから、いったい何事かと思うだろう。


『よければご一緒させていただいても? 実はひとりで飲んでいたのですが、どうにも味気がなかったんです』


もちろん、こんな風に誘われるなんて思ってもみなかったはずだ。


『は、はい……! もちろんです』
『ありがとうございます。お注ぎします』


焦った笑顔で隣の椅子を引かれ、さきほどまで座っていた席から移る。

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