政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
彼女の父親は、六条商事に救いの手を差し伸べる人間を望んでいる。慧は、御門の本家の息子。


互いの利害が一致しているため、親密になるのは造作もないことである。すぐに食事会という名の見合いを打診され、少し間を置いてから承諾した。


ここまでは計画通り。ただ一点を除いて……。


あろうことか、東海林製菓の息子と同席することになったのだ。彼――真輔は、すみれの大学の先輩であり、母親同士が親しいという。
真輔たっての希望で、今回の食事会を開くことになったそうだ。


『真輔くんはすみれに好意があるそうで、彼の母親から妻が頼まれましてね。妻の顔を立てるために食事会を……。本人は優秀ですが、かと言って会社を任せられるかと言えば……。失礼ながら、御門さんと比べると足元にも及びません』


すみれの父親は情けをかけただけで、彼との結婚は望んでいないようだった。


もしかすると、最初は有力候補だったのかもしれない。しかし、慧が出てきたことで態度を変えた可能性がある。真実はわからないが、媚びるような笑顔からそう感じた。


『もちろん、すみれにはこんなことは言いませんが……。ただ、これまでと違って、すみれと真輔くんとは気心の知れた中です。万が一にも、すみれが前向きになるようなことは避けたいと……』
『なるほど。ですが、私がすみれさんに気に入っていただけるとは限りませんし、ふたりの仲がいいのなら少し不利ですね』
『真輔くんとの食事会は、あくまで妻からのお願いです。私としては、ぜひ御門さんにすみれをもらっていただきたい』


心の中で、ほくそ笑む。
一方で、すみれを物のように扱う父親の態度には、苛立ちが芽生える。彼女の気持ちなど見ていないのだと、このときだけでもよくわかった。


自分もたいして変わらないことをしているというのに……。怒りを覚えるなんて身勝手な話だ。

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