政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
『そろそろ本題に入ろうか』


ようやくすみれの父親がそう切り出したのは、食事が中盤に差しかかった。すみれが父親の顔を見つめ、不安と困惑を同居させたような顔でじっと待つ。


『真輔くんと御門さんは、すみれの婚約者候補としてここに来てくれた。もちろん、ふたりはすでに承諾済みだ。今回はふたり一緒にこうして会うことになったから、今後の選択肢はすみれに与える』
『えっ……?』
『もっとも、後々彼らに断られる可能性もある。すみれは、とにかく真輔くんと御門さん、それぞれとの時間を作りなさい』


彼女の動揺と困惑が、手に取るように伝わってくる。顔を強張らせる姿からは、まだ状況を把握できていないように見えた。


慧も真輔も何度か話を振ったが、すみれは当たり障りのない言葉を紡ぐだけ。困惑しながらも、とにかく慧たちの機嫌を損ねないようにしているのがわかった。
きっと、父親からそう命じられているのだろう。


食事会は二時間ほどで終わったが、すみれは最後まであまり笑わなかった。


『驚きました。まさか御門さんも婚約者候補だとは……』


部屋を出て程なく、真輔が話しかけてくる。その目からは、慧の真意を探りたがっていることが伝わってきた。


『これまでお話したことはありませんでしたが、お噂はかねがね……。あなたが相手なら、僕はあまりにも分が悪いですね』


彼とは、すみれが来る前に挨拶を交わしただけ。その後すぐに彼女が到着したため、こうして話すのは初めてだった。

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