愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 決して遠くはない出来事だが、思い返すと途端に過去のこととなっていく。
 けれどお姉様たちは過去だろうと現在だろうと美しいことには変わりない。

 私だって髪はサンドレア家の誰もがそうである様にブラシ通りのいいサラサラの髪だし、瞳の色が私だけくすんでいるということもない。

 なのになぜ顔の印象でこうも変わるのか不思議でしょうがない。

「終わりました」

 鏡を通してみる私は前よりはマシになったものの、やはりお姉様たちと比べれば二段も三段も劣っている。

「ありがとうございます」

 彼女だって私の世話なんか焼きたくないだろうに悪いことをしてしまっているな……と思いつつも、お礼の言葉しか出せなかった。


「行くか……」

 ウジウジして、忙しいラウス様の貴重な朝の時間をこれ以上奪うわけにはいかない。

 これでラウス様が先に食事を始めてくれていると嬉しいのだが、昨日の朝、ダイニングルームを去った私をわざわざ追いかけてきたくらいだし、先に始めているというのはないのだろう。

 ゆっくりと深呼吸とため息を兼ねた息を吐き出してドアを押し出す。
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