愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 私は花瓶なんか近くにあったら割ってしまいそうで怖いからいらないけれど、部屋に彩り一つあるだけで気分は明るくなる。

 今度提案してみようかなと本気で思ってしまう。

 せっかくというべきか人違いをして、私という前例を作ったのだから失敗は生かして欲しいものだ。

 日々の失敗を全く生かしきれていない私がいうのも変かもしれないが、ラウス様ならきっと大丈夫なはずだ。



 足をぶらつかせて何をしようかと考え込んでいた私の意識を部屋へと戻したのはこんこんと控えに叩かれるドアの音だった。

 そして遅れて「お義姉様、いらっしゃいますか?」とこちらを尋ねるような声が聞こえてくる。

 声の主は明らかで「はい」と返事してドアを開くと、そこにはやはりアンジェリカ様がお気に入りのテディベアを抱きしめながらこちらを見上げていた。

「お義姉様、シェフには最高のものを用意させました!」

 テディベアを支える手を一つだけ外し、私の手を引いて早速あの庭へと向かおうとする。

 私とラウス様ほどではないにしろ、私とアンジェリカ様ではいささか身長差がある。
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