愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
「刺繍ですか、いいですね。シェード、いくつか持ってきて」
「かしこまりました」

 すぐに庭を後にしたシェードさんはそれから数分と経たないうちに木のツルで編まれたカゴを持って帰ってきた。

「枠と針、それから布はいいとして……糸はどれにしましょう? モチーフをどんなものにするか初めに決めておくのもいいですが、色から選ぶのもいいんですよ」
「ちなみに私のお気に入りはこの色です!」
「これなんか綺麗な色よね」
「この色、お兄様の好きな色だよ」

 三人とも箱に綺麗に並べられた糸を指差していく。
 アンジェリカが指差したのは彼女の抱きかかえるテディベアの瞳と同じ色のルビーのような紅の色だ。

 次にお義母様が指差したのはカリバーン家の四人の瞳の色でもある、蜂蜜色だ。甘いお菓子を好むお義母様にピッタリのチョイスだと言える。

 最後にサキヌが指したのは自然を想像させる緑色。ラウス様が好きなのだというその色は偶然にも私の瞳の色と同じだった。

「お義姉様、誰の選んだ色にしますか?」

 アンジェリカに三人のうち、誰のオススメを選ぶのかと迫られるがそもそも私はそのどれも選ぶつもりはない。

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