愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
「どれも高価そうな糸と布ですし、私は後で街にでも買いに行きますので……」

 刺繍なら少しくらいはサンドレア家でもしたもので、だからこそわかる。
 私が過去に使った糸よりも何倍、いや何十倍もの金額が張ることを。

 それに練習台の布なんて身体が成長したせいで着られなくなったドレスの端で十分だ。上手くなったらハンカチなりテーブルクロスなりに移行する。

 少なくともこんな、ハンカチにするにも恐れ多すぎて使えない代物に針なんて刺せるわけがない。

「お買い物!?」
「外出許可が下りれば、ですけど……」

 三人の綺麗に揃った驚いた声にハッと自らの置かれている状況を振り返る。

 そもそも一時帰宅すら許されない身である私が外出許可なんて下りるわけないだろう。すっかり忘れていた。

 反省する私の目の前で三人は何やら集まって相談会を開いている。
 外に漏らさないようにと頭を寄せているのだが、興奮しているらしいその声はハッキリ言って丸聞こえだ。

「お母様、まず私がお兄様に駆け寄ります」
「次に私が追撃をするわ」
「そして最後に俺が諌めるようにして……」
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