愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
「遠慮しなくていいんだよ」

 お義父様はなぜかニコニコとすでに用意されたお代わりをずずいと差し出そうとしている。

 距離があるから少し違うかもしれないが、お茶会の時のお義母様たちのそれとよく似ていた。

 私が戸惑っていると、ラウス様を挟んで隣の席に座るサキヌは呆れたように大きなため息をつく。

「お父様、地道に好感度あげようとしてるんですね……」
「私はしばらく休めないからね。こんなときくらいしか交流できないんだから怒らないでくれよ?」
「怒りはしませんけど……」

 お義父様はチラリと期待したような視線をこちらに投げかける。差し出されたお皿は好意の表れだと思っていいのだろう。それなら受け取らない方が失礼だ。

「いただきますね」
「ああ。たんとお食べ」

 2枚目のお肉を頬張るのは決して私の食い意地が張っているとかではないのだ。

 お茶会に引き続き、色々ともらってしまった私のお腹はなだらかな山のようになっていた。さすがに食べ過ぎかと思ったが、美味しいご飯を勧められ断れるような性格ではないのだ。

 遠慮はほどほどにして、せっかくの好意をいただくことにした。後悔はない。
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