愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 ない……のだがどうにかした方がいいとは思っている。今日の主だった行動を振り返ると明らかに摂取したエネルギーの方が多いのだ。


 明日、歩き回れるといいな。
 翌日ならまだ取り返せるだろう。筋力トレーニングで腕立て伏せくらいしかできることのない私はお散歩に一縷の望みをかけた。

 今履いているヒールは特に震えないようにと踏ん張るため、歩くだけでもいい運動になりそうだ。

「明日、楽しみにしているよ」
「私も楽しみです」

 別れ際に言葉通り楽しそうに頬を緩ませたラウス様につられてこちらの頬も緩む。
 今日は同じ部屋では寝ないようで、ラウス様はドアの前で別れの挨拶を告げた。

「モリア、良い夢を」

 部屋に入る直前にラウス様はそう言ってから私の頭を優しく撫でた。
 夜とは少し違う。触るだけのもの。けれどそれはお父様やお兄様がするのと同じようでどこか違うような気がした。

 大きな手も伝わる体温も同じなのになぜだろうか?
 優しい手に続いて落ちて来たのはおやすみのキス。啄まれ、ベッドでのことを思い出してしまう。

「お、おやすみなさい、ラウス様……」

< 151 / 341 >

この作品をシェア

pagetop