愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 次第に赤く染まって行く顔を隠すようにして、俯きがちに呟いてからそそくさと自室へと戻ることにした。閉じたドアに背をつけてしゃがみこむ。

 電気もつけずに真っ暗なその部屋には誰もいない。
 それでも今の顔を誰かに見られでもしたら恥ずかしくて、顔を手で覆い隠す。両手を使っても顔全体は覆えなくて。覆えたところでさえもジリジリと熱は確実に伝わってくる。

 それが余計に恥ずかしくてならなかった。

「早く冷めてよ……」


 それは他ならぬ自分にかけた言葉。
 けれど私の身体は切実な願いを中々叶えてはくれなかった。


 習慣というものは残酷だ。
 寝るまでにどんなに余計な時間を費やしたとしても同じ時間に目が覚めてしまうのだから。おかげで寝不足で身体が怠い。

 そして鏡が手元にないから確認はできないものの、眼の下にはうっすらとクマができていることだろう。

「今日、ラウス様との外出なのに……」

 思えば数日ぶりの外出だ。この屋敷に来てからというもの敷地の外には一歩たりとも出ていない。

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