愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 私の言葉に納得いかないように頬を膨らますお義母様だが、無理にそれを強要することはなかった。

「まぁそうね……『いつか』でいいわ」

 そんな『いつか』などやって来ることはないのだが、そう言って引き下がったのは彼女なりの優しさなのだろう。

 その代わりなのか、それから朝食の時間までお義母様は一片の妥協などせずに私の着せ替えを続けた。

 寝不足と相まって、朝から着せ替え人形のように何度も着替えさせられてさすがに疲れた……。

 服も決まり、仕上げに使用人が髪を梳いてくれている間、うつらうつらと船を漕いでしまったのは仕方のないことなのだろう。

 それから意識を取り戻したのは遠くから聞こえる怒鳴り声を耳にしたからだった。

「だから……!」
「私だって……のよ!」
「だからって……こと……」
「だって……だってそれは……」

 途切れ途切れに聞こえる男女の声は、どうやらラウス様とお義母様のものらしい。

 眠りから覚めた頭を髪がボサボサにならない程度に左右に振ってから、声のする方へと向かった。

 二人の言い合いをどうにかできるとは思ってはいないが、身体が勝手に動いてしまったのだ。
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