愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
「ラウス様、お義母様!」
「モリア!」
「モリアちゃん!」
声を掛けると二人は言い合いをやめ、ほぼ同時に振り返る。
ラウス様は心配そうに、お義母様は嬉しそうに。
「身体は大丈夫なのか?」
「え? あ、はい」
足早に距離を詰めて顔を覗き込むラウス様は、訳がわからず適当に返事した私のおでこに手を当てる。
「とりあえず、熱はないな……」
「ラウス様?」
「疲れているんだろう? 今日はゆっくり休んでくれ」
「え、ですが今日はどこかへ出かけるんじゃ……」
「疲れているモリアを連れていくなんてできる訳がないだろう? いいですか、お母様? あまりモリアに無理はさせないでくださいね」
どうにも私を病弱か何かだと勘違いをしているらしいラウス様は私に語りかけるのと正反対の、突き放すような声でお義母様を威嚇する。
それはお茶会で仲間はずれにされていたお義母様と似ていて、さほど怖いとは思わなかった。ただ家族なんだと思う。
「私だって、私だってモリアちゃんがここに来るのに一役かったのにそれはあんまりだわ……」