愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 農作業や工芸品づくりと平民に交じって行ってきたが、さすがに腕っぷしには自信がないのだが……。今はそれを伝えられるような雰囲気でもない。

 手持ち無沙汰で外を眺めようにも窓にはカーテンがかかっていて何も見えない。町の乗合馬車とは勝手が違って窮屈に感じる。

 だが極たまに町で見かける家紋入りの馬車のほとんどがやはり目隠しがかかっていた。身分が高い人の乗る馬車だとこんなものなのかもしれない。

 もう二度と乗ることのないのだからこの窮屈ささえも楽しんでおくべきかと気をそらす他ない。

 それからしばらく走り続けていた馬車は少しずつ速度を落としていき、そしてピタリと止まった。

 ラウス様側の扉は使用人によって開かれ、そしてゆっくりと地上へ降りていく。

 彼に続いて外へ出ようとするとラウス様の手が差し出される。
 いつもは使用人かお父様が差し伸べてくれるから、他の男性に、それもこれから私の雇い主となるであろうラウス様の手を取るのは気がひける。

「手を……」

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