愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 ラウス様の唐突な質問に模範解答とも言える言葉を返した私だったが、言った後でそれは間違いだったと気づいた。

 私の隣のラウス様は困ったような表情を浮かべていたのだ。ないこともないのだが、そろそろ勘違いに気づいてほしいなんて、ラウス様が私のことを自分が惚れた相手だと信じきっている以上は言って仕方のないことだ。

 私が地道に探してラウス様の前に連れてくるか、ラウス様の前に本人が現れてくれることを祈る他ない。

 そのほかに困っていることといえば、まず頭に浮かぶのはここ数日での運動不足で、これもまたラウス様に相談するようなことではない。これからもひたすら自室で筋力トレーニングに励むだけである。

「本当に何もないのか? どんな些細なことでもいいんだ」

 相変わらず困ったような表情を浮かべながら問いかけてくるラウス様に、これは何とかして困っていることを見つけなくてはと思ってしまう。

 何か困っていること、困っていること……。

「あ!」
「何かあったか?」
「いえ、困っているってほどではないのですが……」
「何でもいいんだ。言ってみてくれないか?」
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