愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 よく見ると全体がお花畑みたいになっていて可愛くも思えてくるのだから不思議なものだ。

 自分が着なければこのまま見て楽しめるのかもしれない。
 だが鏡に映る自身はとても凝視できるものではない。

 お似合いですわなんて微笑まれても「この状態で送り出すつもりですか!?」と盛大な突っ込みが口から飛び出しそうになる。

 おそらく、お風呂で回復するまでずっと意識を飛ばしていた間に何かあったのだろう。
 凄く、大事なやりとりが。

 なんでこんな大事な時に意識飛ばしているの! 少し前の自分の頭をぽかぽかと叩いてしまいたい。けれど私にはタイムスリップをすることなんて出来やしない。

 出来るのは出荷される仔牛のように黙って、使用人に連れられて歩くだけ。

 せめて部屋に入るまで、こんな恥ずかしい姿誰にも見られませんように! と願って。

「モリア!」

 私が案内されたのは、もうお馴染みとなったラウス様の部屋。
 一足先にくつろいでいたらしい部屋の主は私の入室に顔を上げた。そしてベッドの上で両手を広げ、こちらへおいでと微笑みかける。

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