愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 背後のドアがパタンと小さく音を立てて閉まったことで私は前に進む以外の選択肢を失った。ゆっくりとベッドへ向かって足を進め、ラウス様の前に立つ。

 彼は嬉しそうに私を両腕で包み込み、頭のてっぺんにキスを落とした。

「まるで妖精だな。見た瞬間、モリアには似合うと確信していたが、想像以上の可愛さだ。このまま妖精の国に連れて行かれてしまいそうだ……」

 甘い言葉をこぼしながら、頭から順番にキスの雨を降り注がせる。モリア、モリアと名前を呼ばれる度に、私の顔はのぼせてしまったように赤く染まっていく。

 鼻の上でチュッと音を立てられ、今度は口に来るとゆっくりと目を瞑った。けれどなかなか次がやって来ることはない。

 うっすらと目を開けば、ラウス様は自分の唇に指を当てて、右から左へとゆっくりと這わせる。艶のある唇に、何かを誘うような行動に目が離せなくなる。

 じいっと見つめてしまっているのに気づいたらしいラウス様はニッと笑った。私の膝に右手を置いて、そして耳に寄せた唇から言葉を紡いだ。

「モリア、俺の唇にキスして」
「え?」

< 171 / 341 >

この作品をシェア

pagetop