愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 驚く私から少し距離を取って、指で「ここにくれ」と自分の唇を突く。

 キスはいつだってラウス様からしてもらってばかりで、私からしたことは一度もない。奉仕されてばかりで、申し訳なさはあったけれど、でもいきなり唇にキスなんて。

「無理ですっ」

 恥ずかしすぎる、と顔を覆えば、ゆっくりと片方の手を外される。

 目も閉じているからラウス様が今どんな表情をしているかは分からないけれど、でも無理だ。ラウス様とはすでにキス以上のこともしているけれど。

 でも、でも……。
 百面相を繰り返していると、ふわりと身体が浮いた。かと思えばすぐにぬくもりに包まれる。この感じを私は知っている。

「モリア」

 呼ばれて、おずおずと目を開けば、ラウス様の膝の上に横抱きの状態で乗せられていた。
 ラウス様の顔と私の顔、距離はわずか数センチほど。

 それしか存在しない距離で、ラウス様は私の耳にキスを落とすと「キス、して」と色気ムンムンの声で囁いた。

 妖精の国に連れて行かれるなんて嘘だ。
 ラウス様の檻に捕まったのは私の方。

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