愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 楽しそうなラウス様に向かってせめてもの抵抗で頬を膨らませれば、指先でツンツンと突かれるだけだ。モリアのほっぺは柔らかいな~なんてひとしきり遊び終わると、私の頭を撫で、布団から出た。

「身体、辛いだろう。食事と服は後で運ばせるから今日は一日寝ていなさい」

 ラウス様がそう告げて出て、しばらくしてから使用人達がやってきてくれた。

 お湯で濡らしたタオルで身体を清められ、今度は透けていないネグリジェを着せられた。

 その後簡単に食事を取って、布団へ戻される。「ゆっくり休まれてください」なんて気を使われながら、眠りについた。



 目を覚ませば窓の外は夕暮れに染まっていた。
 畑を耕さず、何かしらの作業をするのでもなく、ただただ寝てこの時間を迎えるなんて。すっかり時間を無駄にしてしまった気分だ。

 けれど朝とは段違いに身体は楽になった。腰の痛みも随分和らいでいる。

 トントンと腰を叩き、窓へと向かう。空気の入れ替えに、と窓を開こうとしてはたと気づいた。

 昨日の朝にはなかったはずの花瓶が置かれている。
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