愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 アンジェリカはまだ幼いというのに、もうすでに夜会の中心で踊っても恥ずかしくはないほどの腕前だった。

 さすが名門貴族の令嬢といったところか、背中はピンと張っていて、足の動かし方も自然で。
 少なくとも私は今まであんなに軽やかに踊る令嬢を見かけたことはないと断言できる。

 夜会で綺麗なご令嬢を妖精や花に例える男性陣の気持ちがこの一時にして理解できたような気がした。

 端正な顔立ちと人好きな笑顔、そして技量もいいときた。
 きっとアンジェリカが夜会デビューしたその日、会場内の視線を一気に引き受けることだろう。そして口を揃えてアンジェリカを賛美するに違いない。

 もしも今隣にお姉様が居たのならアンジェリカについての噂話に花を咲かせたことだろう。

 それを見せてもらった後にこの提案だ。一瞬だけ嫌がらせの線を疑った。が、この可愛らしい妖精のようなアンジェリカがそんなことするわけもなく、キラキラとした目で一緒に踊りましょう? と誘っていたのだ。

 そしてその目に落とされ「わかりました」と言ってしまうまでそう時間はかからなかった。

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