愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 ラウス様から視線を逸らして、今晩からでも練習をちゃんとするから見逃してはくれないだろうかとの念を飛ばす。

 そして何とかこの状況を切り抜けるための方法を考える。

「私がしっかりリードするから安心してくれていい」
「ですがラウス様の足を踏んでしまったらと思うと申し訳が立たないので……」

 今回は遠慮させていただきたい、との意味を語尾に含めて申し訳なさそうに上目遣いでラウス様の表情を伺う。

 この方法はお兄様達には効果バツグンだった。
 お姉様には効かなかったどころか角度がダメだの何だのと指導まで受けてしまったのだが、今のところ成功の割合は半々くらい。是非ともラウス様には効いて欲しいものだ。

 だがラウス様の答えは私が望んでいたものと大きく異なった。

「モリアになら踏まれてもいいさ」

 ラウス様が多くの令嬢から好意を寄せられる理由がよくわかった気がする。

『紳士』の基準がよくわからない私がいうのも何だが、自らが一歩引き、女性を立てるような、この対応こそが紳士的な対応というものなのだろう。

 そんなことを言ってくれる相手などお父様以外にもいたのかと目から鱗である。

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