愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 ……だから踊りたくはなかったのだが、これからも踊らなければならない時はやってくるだろう。それならやはり練習はしておこうと心に刻んだ。

 それにしてもラウス様は踊り終わった後も一向に私の腰から手を離そうとはしない。まさか上手く踊れるまで解放しないということなのだろうか。

 アンジェリカが朝から夕方までダンスレッスンを受けていたのを知っている私としてはその可能性は捨てきれない。

 上級貴族とは同じ貴族でありながら雲の上の存在だったのだが、その気高さの下にはたくさんの努力が積み重なっているのだろう。期間限定とはいえ、その人の妻になる私にはそれと同じ技量が求められてもおかしくはない。

 ラウス様が踊れるまで付き合ってくださるというのならば、彼の期待に添えて私も頑張る他あるまい。強い意志を込めてラウス様を見つめ返すと、ラウス様の私の腰を支える手に力が入った。

 どうやら私の意思は十分伝わったらしい。

< 194 / 341 >

この作品をシェア

pagetop