愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 二人はよく似た顔を並べて頬を膨らませながら、ここにはいないラウス様への恨み言を呟いていた。

「初めてのお買い物だってお兄様とだったのに……」
「お茶会はお兄様よりも先に義姉さんとしただろう……」
「ラウスはお茶会なんて滅多にしないじゃない!」
「まぁそうだけど、義姉さんはお兄様の妻となるんだから仕方ないだろう?」
「私はモリアちゃんのお義母様よ!」
「私だって義妹ですわ!」

 二人はよほどハンカチが欲しいのか、サキヌがどんなに諌めようとも引くつもりはないようだ。

 これにはさすがの彼もお手上げ状態らしく、お義母様とアンジェリカに向き合っていた身体を今度は私の方へと向けて頭を下げた。

「義姉さん、どうか二人の分も作ってやってほしい」
「はい!」
「で……。出来れば、義姉さんの負担にならなければなんだけど……」
「はい」
「俺とお父様の分も作ってもらえるかな?」
「もちろんです!」

 申し訳なさそうに頬を掻くサキヌに元気よく返事した。すると彼だけではなく、お義母様とアンジェリカの顔、ひいては私の顔までも和らいでいく。

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