愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 サキヌからの申し出によって、ラウス様が不在の時間のカリバーン家での仕事が見つかったのだった。嬉しくないはずがない。


 脱 穀潰しである。


「皆さんはどのようなデザインがよろしいですか?」

 先ほどのものは特に誰に渡すと決まっていなかったため、この屋敷で印象に残っていた薔薇を刺繍した。

 今度は贈り主が決まっているのだから、その人にあった物を刺繍するのでもいいが、生憎私は彼らのことをそんなに詳しくは知らない。それでもちょうど本人たちがこの場所にいるのだ。

 それなら彼らに直接尋ねてみればいいだろう。
 そう思い聞いてみたのだが、三人が三人とも同じ答えを返したのだった。

「薔薇ですわ!」
「薔薇かしら」
「薔薇がいいな」
「皆さん、薔薇でよろしいんですか?」
「ああ。出来ればお父様のも薔薇にしてくれると嬉しい」
「構いませんが、難しくなければ薔薇以外のものでも刺繍できますよ?」

 彼らの前でしてみせたのは薔薇ではあるが、見たことあれば大抵どんな花でも、花でなくても刺繍できる。

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