愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
「ありがとうございます」

 いつからか私の背後で控えていたシェードにお礼を言う。すると彼は大きな身体を少しだけ曲げて「アンジェリカ様の外出は明後日でございます」と耳打ちした。



「お父様、お兄様、お帰りなさい!」

 二人の帰宅を聞き、玄関へと駆け出したアンジェリカはすぐさまお義父様の胸へと飛び込んだ。

「どうしたんだい、アンジェリカ? 今日はやけに機嫌がいいじゃないか」
「聞いてください、お父様! お義姉様がハンカチをプレゼントしてくださると約束してくださったのです!」
「ハンカチ?」
「そうよ。それはもう素晴らしいものでね!」

 アンジェリカに続いてお義母様まで嬉しさを抑え切れずに語り出した。

 その姿にお義父様もラウス様もついていけずに首を傾げて、恥ずかしさで真っ赤に顔を染め上げた私に視線を注ぐ。

 だが二人はそんなことは構わずに先ほどよりも激しい賛美を代わる代わる繰り返す。

「針と糸を巧みに使っては一つ、また一つと花弁を作り上げていくのです!」
「腕利きの職人でもあんなに軽やかには進まないわ!!」
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