愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
「あのね、モリアちゃん。ラウスが愛しているのは正真正銘あなたなのよ」
「ですが……」
「ラウスのことを全く覚えていないっていうのは、あなたがこの家に来た翌日にラウスから聞かされているわ。そしてあなたが何か勘違いしているらしいってことも。会った日はあなたのデビュタントだし、顔を合わせたのはほんの少しだけって言うし、何よりあの子は迎えに行くのに五年もかかったんだから忘れられても仕方ないことよ。だから早く誤解を解いておきなさいってあれほど言ったのに、だからお買い物まで譲ったのに、何であの子はまだ何もしてないのよ!!」


 それは私に向けてというよりはラウス様に向けての言葉だった。

 そのせいだろう。ラウス様から口止めされていた五年という数字の謎とラウス様のことを全く覚えていない理由も一気に解決してしまった。

 デビュタントの夜。
 通りで全く覚えがないはずだ。あの日の記憶なら丸っと、スッポリ抜けてしまっているのだから。

 よくよく考えても見れば、公爵という地位を持ちながらどの階級の夜会にも顔を見せるダイナス様を除いて、下級貴族以外と手紙以外で交流を持ったのはあの一夜だけである。

< 225 / 341 >

この作品をシェア

pagetop