愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 ラウス様の帰宅には些か早すぎるというものだ。驚きと早速やって来た謝罪の場に顔をゆっくりと上げ、そして目の前の人を見据えると朝とは明確に違う部分が一箇所だけ見つかった。

 ラウス様は大きな白薔薇の花束を抱えていたのである。庭に咲く白薔薇と劣らないほどに無垢なその花は、触れればすぐに散ってしまうほどに繊細なものだった。

「モリア、君との約束を違えてしまって本当にすまないと思っている。だが君さえよければこんな俺と結婚してほしい」

 その言葉は束になった繊細な薔薇達のように気をつけていなければすぐに崩れてしまいそうなほどに弱々しかった。

 断られるのを怖れるように。
 だが謝るのは私の方なのだ。

「悪いのは私です。あなたのことを忘れていたのですから」
「だが思い出してくれたのだろう? 私はモリアにハンカチを差し出されるまでずっと忘れていた。そして間違えた。モリアに贈るのは白薔薇でなくてはいけなかったのに……」
「ラウス様……」
「迎えに行くまでに五年もかかった。その上、約束すらまともに果たせないなんて、見損なっただろう?」
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