愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 ひどいことを言ってしまっているのは分かっている。だがそれを伝えなければ私はきっとこの先ずっと後悔するだろうと思ったのだ。

 自己保身の考えに怒られるかと身を縮めていると、ラウス様はゆっくりと抱きしめてくれた。

「ありがとう」――と涙を落としながら。

 私の背中で組まれたラウス様の手には未だ花束が握られており、その花はいくつか花弁を散らしてしまっているだろう。

 だがその花はやはり美しいことには変わりないのだ。



「モリア、愛してる」
「ラウス様……、も、もういいです。ちゃんとわかってますから……」

 ラウス様はそれからというもの、昼夜問わず愛の言葉を囁くようになった。それは朝に顔を合わせた時であったり、ラウス様が出勤する前であったり、帰ってきた時であったり。

 顔を合わせる時には必ずと言っても過言ではないほどに、恥ずかしさに俯いてしまう私の頭に惜しげも無く降り注ぐ。

 ラウス様はあの日の私に言ったのだ。

「覚えていないのならこれから何度も上書きしていくだけだ」――と。

 その時はまさかこんなことになるなんて思ってもみなかった。

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