愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 …………恥ずかしくてそんなこと出来ないけれど。

「モリア?」

 ラウス様に触れることを想像し、一人で勝手に頬を染めた私をラウス様は心配そうに覗き見る。

 親切心しかない彼がまさかそんな理由で顔を赤らめているなんて気づくはずもなく。しきりに「大丈夫か?」と伺っては発熱がないかと確認するために互いの額に手を伸ばす。


「熱……はないか。モリア、今日はもう休もう」
「だ、大丈夫です。何ともありませんよ!」

 赤くなった事実を隠すかのように大げさに手を振ってラウス様の考えを否定すると、彼は嬉しそうに頬を緩めた。

「また明日、な?」

 ラウス様は私の髪をすくようにして頭を撫でる。その言葉は慈しむかのように優しく、そして楽しげだった

 そんなラウス様にこれ以上ヤケになっては余計に恥ずかしくなるだけだと理解した私はそれを諦めるしかない。

「……はい、おやすみなさいラウス様」
「おやすみ、モリア。いい夢を」

 ラウス様の優しげな笑みに拙い笑みを返して、彼の部屋を後にする。隣の自室へと身体を滑り込ませ、一直線にベッドへと向かってダイブした。

「はぁ……」

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