愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 息を荒らげるラウス様はどこか子どものようだ。けれど私の心も弾んでいた。

 繋がれた手をそのままに「連れて行ってください」と笑う。私の返事を聞いてますます機嫌が良くなったラウス様はハーヴェイさんに声をかけ、遠駆けの準備を整えていく。

 途中、ハーヴェイさんは何度も「馬車」と口にしていたため、てっきり馬車での移動に変わったのだろうとばかり思っていた。

 だが私が用意してもらったドレスに着替えて戻ってくれば、用意されていたのは馬車ではなく馬で。

 隣には勝ち誇ったような表情のラウス様と、疲れた顔をしたハーヴェイさんが立っていた。

「行こう」
「はい」

 ラウス様の手を取り、馬に跨がった。
 馬を走らせて数十分ーー周りを針葉樹で囲まれた湖に到着した。近くには建物もなければ、私達以外の人も居ない。

 自然の中に入り込んでしまったかのよう。
 サンドレア領とどこか似た雰囲気のある場所にほおっと息を吐く。馬を近くの木に繋いだラウス様は手招きをすると、大きめの切り株に腰掛けて両腕を広げた。

「モリア、おいで」

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