愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 それにサキヌの場合はアンジェリカとは正反対の、頬が緩む一歩手前で何とか堪えているといった表情を浮かべていた。そんな彼が予定よりも早く帰って来るなんてことはないだろう。

 お義母様はといえば今日は手紙の返信に忙しいのだと、お茶会を催せないことに申し訳なさそうな表情を抱えて自室へと去って行った。

 その後を数歩遅れて歩く使用人の手には当たり前のように大量の手紙が乗せられていた。パッと見えただけでもサンドレア家に届く年間数ほどあり、これを一日で終わらせるつもりなのかと驚いたものだった。

 ……となればこの物音の正体はアンジェリカで間違いはないだろう。だがおかしなことに彼女の声が一向に聞こえてこない。

 何かあったのだろうか?
 ドアからそろりと顔を覗かせて廊下を探ると、階段付近に5人の使用人達がまとまって歩みを進めていた。

 その中にこの屋敷では特徴的な銀色の髪をしたシェードの姿がまず見つかった。ということは自然とそこにアンジェリカもいると考えていいだろう。

 おそらくは使用人達の真ん中に隠れてしまっているのだろう。

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