愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 ハリケーンが過ぎ去ったとばかりに少しだけドアを開けると目に入ったのは、先程からアンジェリカの部屋の前で待機している使用人達に新たに加わった仲間とシェード。

 そして見慣れぬアンジェリカよりも二つか三つほど年上であろう炎を纏ったかのような紅の髪をした少年と、彼に付き添う頭から足のつま先まで全身黒で塗り固めたシェードと同じくらいの青年であった。

 紅色の少年はその場にいる使用人達をその場から退けさせると、ドアの目の前で部屋の中から出てくる様子のないアンジェリカを怒鳴りつけた。

「この私が直々に足を運んだというのに、部屋に引きこもっているとは何事か!」

 少年の態度の大きさと周りの使用人の対応からして、彼がアンジェリカからハンカチを取り上げたのだというマクベス王子で間違いはないだろう。

 彼の声が届いたのか初めこそ閉ざされていたドアがゆっくりと開いた。
 するとマクベス王子の表情は次第に和らいで行き、そして緩んだ口からは不貞腐れたような言葉が漏れる。

「初めから出て来ていればいいものを……」

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