愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 そう告げる彼は、苛立っていたのはアンジェリカの顔が見られなかったせいだと思い切り態度に表してしまっていて、初めてマクベス王子を拝見した私でさえも彼の思いをあらかた把握してしまうほどだった。

 大方、ハンカチを取り上げたのも嫉妬か何かだろう。
 胸のあたりを温かくしてドアの隙間から眺めていた。

 けれど次の瞬間に私が見たのはマクベス王子とは正反対の、冷え切った表情を浮かべたアンジェリカだった。

 一瞬、自分の目を疑った。あのアンジェリカもこんな表情を浮かべるのかと。
 だが冷え切っているのは表情だけではなかった。

「マクベス王子、私、気分が優れませんの。お構いできず申し訳有りませんが、どうぞ本日はお帰り願えますでしょうか?」

 それは明らかなる拒絶を表していた。

「…………また……来る」

 それを間近で向けられたマクベス王子の顔は悲しげで、今にも倒れてしまいそうなほどに衝撃を受けていた。

 心なしかアンジェリカの部屋から遠ざかる歩みさえも揺らいでいるように見える。

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