愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 辛い身体をドアに寄りかかりながらもマクベス王子の背中を見送るアンジェリカの視線はやはり冷たいもので、彼の背中には未だそれが刺さり続けているのだろう。

 そう思うと、先ほどほんの少しだけでも彼の気持ちを察してしまった身としては、王子という私よりもうんと身分の上の、けれども歳は私よりも幼いであろう少年が可哀想に見えて仕方がなかった。

「シェード」

 王子の背中が見えなくなるとアンジェリカはすぐさまシェードを呼びつける。
 その場にいた彼はアンジェリカの口元へと耳を寄せる。するとしばらくしてから立ち上がり、そして私の部屋までやってきた。

「モリア様、よろしければアンジェリカ様にお会いしてはいただけませんか?」
「今は体調が悪いんじゃ……」
「あれは機嫌を悪くしていらっしゃるだけなので、モリア様さえよければ」
「ええ、是非」

 隙間程度に開いていたドアを大きく開き、冷たい目をしていた少女の元へと大きく歩みを進めていく。その顔は以前王子の元を訪ねることを嫌がった少女のものではなく、貴族としての義務を抱えた無機質な表情であった。

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