愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 けれど私が見たいのはそのどちらでもなく、歳相応の明るい笑顔を浮かべたアンジェリカなのだ。

「アンジェリカ!」
「お義姉様!?」
「アンジェリカ。実はね、アンジェリカのためにもう一つ刺繍してみたの」

 私の登場に目を見開いているアンジェリカの前にすかさず刺繍をしたハンカチを差し出す。もう以前のようにお伺いを立てるようなことはしない。

 彼女ならもらってくれると信じているからだ。

「今度はチューリップにしてみたの」

 先ほどあったことは何も知らないように振る舞ってみれば、次第にアンジェリカの表情は和らいでいく。

「お義姉様……。ありがとうございます!」

 ハンカチを嬉しそうに胸に抱えるアンジェリカの顔はまだ私の望むような晴れやかな笑みとは違うけれど、それでもやはりアンジェリカには笑顔が似合う。

 こんな風に幼い少女の顔に光を照らせたのならば、私の手先の器用さも捨てたものではないと嬉しく思うのだった。



「モリア、今日は何かあったのか?」

 ラウス様に心配そうに見つめられ、疲れて帰って来ている彼に心配をかけてしまったことにひどく申し訳なさを感じてしまう。

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