愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
「機嫌悪く帰ってきたときは大抵食べないな。アンジェリカが普段抱えているテディベア、あれはお父様がアンジェリカの誕生日にプレゼントしたものなのだが、あれを叩き落とされて泥まみれにして帰ってきた時は丸一日飲まず食わずで、シェードが泣き落としてやっと食事をとらしたほどだったなぁ」
「え……」

 ラウス様はまるで懐かしい出来事を思い返すかのようにしみじみとその出来事を語るが、私はそのことの恐ろしさに身体を震わせてしまう。

 そんなこと、私には出来そうもないからだ。

 人生で一度だけ引いたことのある風邪の時ですら、二食は食べていた。
 お粥と、お兄様達が「死ぬんじゃないぞ、モリア!」と励ましながら差し入れてくれた丸焼きの肉、そしてお姉様がとって来てくれた山の果実。

 とりあえず用意されたものを全て食べていたため、一体どれが風邪に効く食べ物なのかは分からなかったが、何かのお陰で一日もすれば風邪が治った。

 もしもう一度風邪を引いたとして、そんな状況に陥ったのならばきっと風邪ではなく栄養不足によって身体が弱っていってしまうに違いない。

「アンジェリカは大丈夫だったのですか!」

< 251 / 341 >

この作品をシェア

pagetop