愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 戸惑いながらも私は先ほどそうしたようにずいっと腕の中の子の顔を近づける。するとやはりダイナス様もシャロン様と同じように首を傾げた。

 そして「知らないな。うちの子じゃないんじゃないかな……」と指でアゴを撫でた。

「あの!」

 グスタフに似た子を抱く力を強め、考え込む仕草の2人に私はある相談を持ちかける。

「この子を、譲ってはいただけませんか! 一緒に暮らしたいんです……」

 そう言ってから、私の今の家はサンドレア家ではないことに気づく。思いつきで行動してしまったことせいか今さらながら背中に緊張の汗が伝う。

「あら、可愛い」
「モッチモッチですわね!」

 その汗で濡れた背中からヒョッコリと顔を出したのはお義母様とアンジェリカ。
 私の腕の中で大人しくしているグスタフに似たこの子のまん丸としたお腹をツンツンと突いては2人揃って楽しそうに頬を緩めている。

「いいわよ。その子、随分モリアさんにご執心のようだし。あなたも、うちで暮らすよりモリアさんと一緒にいたいのよね?」

 シャロン様に顔を覗き込まれた彼は「ぶにぁ」と声を上げた。

< 275 / 341 >

この作品をシェア

pagetop