愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 ラウス様を受け入れるのが仕事なら、きっと毎晩とまではいかずとも定期的に行われるだろう行為。気恥ずかしいなんて感情は邪魔になるだけ。

 そう分かっていても、私にとって『初めて』は大事なもので、本来ならば旦那様にだけ許すことだったのだ。いくらラウス様が優しい方でも緊張してしまう。身を固めれば、額にキスが落とされる。

 親が子どもにするような、触れるだけのもの。

「優しくする」

 どうやらふがいない私に気を使ってくれたらしい。
 胸元に手を移しながらも、何度も顔にキスを落としてくれる。チュッと鳥のさえずりのような軽い音。

 惜しげもなく降り注ぐそれはまるで愛の証明のようだと勘違いしてしまいそうになる。恥ずかしさで顔を赤らめ、目をぎゅっと閉じればまぶたにさえも落とされる。

 本来ならば使用人である私が奉仕すべきなのに……私はあまりにも無力であった。




 カーテンの隙間から東雲色の光がほのかに差し込むころ、私の目はパッチリと開いた。

 初めて行為に及んだというのに、昔からの習慣は中々変わらないらしい。ただし腰には誤魔化しようのない鈍い痛みがある。

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