愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 それをつい先ほど、私の初恋を喜んでくれた家族に打ち明けることなど到底出来なかった。

 だから代わりに大きな嘘をついた。

「あのドレスを見たら、お姉様達のこと思い出しちゃって。カリバーン家で優しくしてもらってるけど、その分ずっと家族が恋しかったみたい」
「……そう、なの?」

 心配そうに見つめるお母様から目を逸らし、そしてせっかく綺麗にできたその花を、その出来栄えに相応しく、お姉様達が残していってくれたリボンなどの小物で手早く飾り付けていく。

「もうブーケも出来たし、そろそろ帰らなきゃ」

 飾り付けの最中もずっと納得いかないとばかりに疑いと心配が混じった視線を私の背中に注ぎ続けたお母様に、誤魔化すように別れを告げると、完成したブーケを抱えて久しぶりのサンドレア家を去ることにした。

 グスタフは声をかけなくともすでに私の足元に寄り添っていた。リビングに残っていたのに、彼には私の心の動揺が伝わっているようだった。

「帰ろう、グスタフ」

 帰ると告げたその屋敷はいつまで私の居場所となってくれるのだろうか。
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