愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 行きよりもよく揺れる馬車の中で、ラウス様と共にいられることの嬉しさとあの場に帰ろうとすることへの罪悪感が積もっていった。

 私の心とは裏腹に行きよりも早く帰路へと着いた馬車から、この一ヶ月ですっかりヒールに慣れて震えることのなくなった足を下ろす。

 胸には目を覆いたくなるほどの真っ白なバラ。ずっと残るなら綺麗な物をと時間をかけて選んだ自分が今では恨めしく思える。

「モリアちゃん、お帰りなさい」
「ただいま帰りました」

 おかえりと出迎えてくれるお義母様に、新たな真相を知ってしまった私はその心を覆い隠すように笑みを浮かべた。

 そんな私を変に思ったのか一瞬、眉間に皺を寄せたお義母様だったが、すぐにその視線は私の顔から腕の中のブーケへと移る。

「あら! 綺麗ねぇ……」
「ありがとうございます」

 皮肉にも作った後に役目を果たせなくなってしまった腕の中のブーケは、自分で言うのもなんだがとても綺麗でよく出来ていると思う。

 いや、役目を果たせないからこそ余計に私の目には眩しく見えているのかもしれない。

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