愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 これ以上、強張った笑顔を向け続ければ心の中に隠したものがバレてしまいそうな気がして、お義母様との話を切り上げて、早々と逃げるようにして部屋へと戻った。

 そしてグスタフが身体を滑り込ませるのを確認すると私はゆっくりとドアを閉めた。

「はぁ……」

 力が抜けた背をドアに預けながらため息を吐くと、グスタフは私の足にちょこんと手を乗せた。

 そして彼は私の視線を独り占めすると、見てろよと言わんばかりに鼻をふんと鳴らしてから部屋の中心まで移動するとその場でクルクルと回り始めた。

 それはダンスステップである。
 グスタフがいつのまにステップを習得したのかは分からないが、彼の言いたいことは伝わった。

 とりあえず身体でも動かして気を落ち着かせろと、ここにはいないお兄様の代わりに私を激励しているのだろう。

「踊ろうか、グスタフ」

 唐突に降り出した、窓の外から叩きつけるような雨に身を委ね、私は踊り出した。観客はグスタフただ1匹。

 それもステップを間違えた時には「ぶにぁ」と鳴いて指摘するようなスパルタなお客さんである。

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