愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 だがその鳴き声はグスタフだけはずっと側にいてくれているのだと証明してくれているようで心地いいのだ。

 落ち着いてくるとふと頭によぎるのは週末の夜会のこと。このままラウス様と共に出席してもいいのだろうかと考えてしまう。だがその時にもグスタフはぶにぁと鳴く。

 本当に何から何まで気の利く相棒である。
 雨音が遠ざかるまで踊り続けた時にはもう疲れ切っていて、そのままベッドへと倒れ込んだ。


 私がサンドレア家から帰ってきて数日、ラウス様の顔を一度も見ていない。正確にはお義父様も、だ。

 2人とも仕事が立て込んでいるらしく、お屋敷には帰って来られていないのだ。

 2人の身体を心配しながらも、私は心の中で少しだけホッとしていた。
 ラウス様にはあの事実を伝えなければいけないと思いながら、それまでの時間を少しでも引き伸ばしたい自分がいるのだ。

 私はとてもズルイ人間だから、悪いと思っていてもなお、隠し通せればいいのにと願ってしまっている。

 今日も今日とて部屋に閉じこもっては身体を動かす――それが私にとってのつかの間の心の休息時間だった。

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