愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 昼を過ぎた頃から使用人達にドレスを着させてもらい、それからこの地味顔を隠すべく、ジッと椅子の上で身を固めてメイクを施してもらった。

 そして最後にお義母様の見立てのアクセサリーを胸元へと飾る。

「よし、かわいいわ!」

 私の完成形を近くや遠くからと場所を変えて眺めるお義母様は最後に力強く頷くと、周りの使用人達もそれに呼応した。

 全面鏡を前に用意された私は、目の前の誰だかよく分からなくなった鏡の中の私と対峙する。本当にこれが私なのかと手を振ってみると、鏡の中の私はそれに振り返す。

 こうして私はメイクとは人を変えるものだと改めて実感したのだった。

 それから別室で待機していたサキヌと合流し、お屋敷にお留守番となったアンジェリカとグスタフに見送られながらカリバーン屋敷を後にした。

 お城に行くのと、久しぶりにラウス様と顔を合わせる緊張感が相まって私の意識は早くも何かに侵食されそうになる。

 私は頭の中で何度もこれは仕事、これは仕事なんだと言い聞かせ、何とか意識を取り戻す。

 さすがにそう何度も緊張に意識を支配される訳にはいかないのだ。

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