愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
「義姉さん、大丈夫だよ。俺もお母様もいるから」

 そして何より今日はサキヌとお義母様も一緒なのだ。食事マナーは立食式であるらしいから一切手をつけなければ問題ないとして、挨拶は合流するラウス様の迷惑とならないよう、最低限の会話で留めておくことを心に誓う。

 そして絶対に醜態を晒すわけにはいかないと気を引き締めて、グスタフを観客に迎えて行ったダンスレッスンを思い出す。


 よし、最難関のステップはもう問題ない。

 確認するだけで楽になった心を抱え、いざ久しぶりの上位貴族の社交界へ!
 そう踏み出したのだが、さすが上級貴族の妻の位置にいるだけあって、周りの人は優しかった。そしてダンスステップを披露する場はなかった。

 私はただ合流したラウス様とお義父様を加えた4人と共に行動を共にし、時折振られる話題に愛想よく相槌を打つだけで良かった。

「モリア、実はもう1人紹介したい人がいるんだ」

 ラウス様がそう切り出すといよいよ私の恐れていた、ラウス様と2人っきりになる時間が出来てしまった。

「はい……」
「そう怖がらなくても大丈夫だ」

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